漢方の話【2】夏バテの漢方後編
夏バテと漢方の後編です。
ホンダ薬局では漢方の事を「漢字で行う科学」として店頭でお話しています。
1)梅雨時から真夏、秋の始めまで問題になる、自然環境からの「暑さ」「湿気」。
2)現代ならではの「エアコン(および温度差)」「冷たいもの食べ過ぎ」「換気不足の湿気」。
今回は、2)についてです。
あくまでも夏バテ、ですから、疲れが既に出ている前提で考えます。
エアコンによる問題には、冷え・冷えた風・冷えの蓄積・外気との急激な温度差などがあります。
とは言っても家庭用のエアコンくらいなら、よほど強くしても短時間であれば普通の人には特に問題は生じないはずだと思います。
なのに短時間で冷気に負けてしまう人は、夏になる前からすでに身体が冷えていたり(冷え性、血流の悪化)適応力の低下している人で、そこが改善すべきところになります。
普通の人にとって、特に問題になるのは、「冷えとは蓄積していくものだ」、と言うことです。
例えればプール。
夏休み、最初プールに飛び込んだ時は気持ちよくても長時間入っていると段々寒くなり、終いには唇が紫に。
これと同じことが屋内でもっと時間をかけて起きるわけです。
エアコンの冷えは蓄積する場所で症状が変わります。
①胸より上(漢方用語、上焦)に冷えが蓄積するのは、主に冷風が犯人、風邪をひいた様な症状になります。
具体的には、頭痛・発熱・鼻水・肩こり・咳などです。
簡単な生姜湯のようなもので対応したり、冬に使う麻黄湯・葛根湯の利用まで色々考えられますが
普段から汗を沢山かいている、疲れ、などの夏バテ条件から考えれば
ファーストチョイスはこの漢方薬だと思います。
ケイシカオウギトウと読みます。
効能には、湿疹・皮膚炎・あせも・ねあせ、え、なに?という効能ですけど、
これらは全て疲れているから、上焦が冷えても汗が出続ける、そう考えてはどうでしょう。
②胸以下おヘソまで(中焦)に冷えが蓄積すると起きるのは胃腸症状です。
ここに冷えの蓄積が起きる原因は殆ど冷たい飲食物、体を冷やす性質の食べ物です。
症状として多いものは食欲不振・胃痛・下痢、酷いと嘔吐。
胃腸の症状は、漢方薬の一番得意な分野ですから星の数ほど(大げさ)ありますが、
これも軽ければ生姜湯(生姜+黒砂糖)で様子をみても良いと思います。
(と言ってもせいぜい20分くらいで治まらなかった本当の漢方薬にチェンジ)
あんまり冷えは感じないのに差し込むような痛みが強かったり、吐き気が続くようなら
この漢方薬
アンチュウサンと読みます。
中(中焦)を安んずる薬。名前と効能が一致しています。
③へそより下(下焦)に冷えが貯まる場合には冷えと湿気、両方の影響が考えられます。
最後の項目「換気不足の湿気」住居や職場の環境も問題です。
足腰がいつも重だるくなります。
関節痛や腰痛、筋肉が固くなりこわばり、ぎっくり腰を起こす原因になるかもしれません。
漢方薬、こういうのがあります。
キョウヨウレイサンと読みます。これだけは商品の名前です。
おまけにホンダ薬局では取り扱っていない商品です。(笑)
名前が面白いのでとりあげました。
もとになる漢方薬の処方名は苓姜朮甘湯、リョウキョウジュツカントウと言います。
これはホンダ薬局でも置いてあります。乾姜というとても辛い生薬が入っています。
何十年も前、漢方を習い始めた時、師匠から「苓姜朮甘湯の目標は、水中に座するが如し」と教わりました。
この下焦の冷えと湿度にも適応する薬は他にもいくつもありますが、症状が「冷えと湿気の合体」で起きているので冷シップとは相性の悪いことだけは覚えておきましょう。
貼っている間、楽になっているように思えますが、剥がすとすぐぶり返すことでわかります。
他にも夏バテ対応の漢方薬は沢山ありますが、
暑さ+湿気+疲れ+食欲不振+クーラー。
これらの要素の順列組み合わせと強さの割合で使う漢方薬がかわります。
漢方薬はとても理論的でありながら、服用する者への寛容性を持ち合わせています。
飲まず嫌いはもったいないです。
時々話題になる「薬膳」。
これは漢方と言うより、漢方薬に配合される一つひとつの生薬(桂枝とか甘草とかナツメなど漢方にも食品にも使われる)の性質を利用した料理です。
まず、漢方の目を持って弁証論治(今、どの様な状態なのかを理解し、どうすれば良くなって行きそうか判断)し、それに併せて使えば抜群の効き目があると思います。
そんなこんなでホンダ薬局では、漢方薬を用いなくても、漢方の目を持つことの大切さをお客様に話し、「漢方、勉強するといいですよ」そう勧めています。
漢方の歴史(とりあえず二千年)・生薬の発見・生薬の組み合わせ等など、面白さは人の一代では語り尽くせないものと思っています。只々圧倒されるのみです。
ホンダ薬局
「対話型薬局」
ホンダ薬局には漢方関係の本も沢山あります
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